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季節外れの団扇

中学3年、チャリで彼女の家に向かっていた。
この坂を登りきればその子の家だと腰を浮かせた時、
「お〜ユダ〜」
2コ上の先輩だった。

特に親しくもなかったし、
中学時代の2コの差はとてつもなく大きくて、
差があり過ぎた。

俺は先輩が自分のことを憶えてるのに半分驚いてチャリを止めた。
それに、先輩はシンナーから抜け出せずヤバイ。
それは仲間内でも噂になっていた。
ヤバイ目撃談も多かった。
仲のいい先輩からは、
「あいつはとにかく、速攻でいくべ、小さくて強くねえのになあ。でも真っ先にいくんだよなあ。○○中のアレ、あいつのニードロップで血がピューだったよ」
なんて聞いてたし、

記憶が曖昧だけど夏ではなかった。
夏ではなかったけど先輩はうちわを扇いぎながら「よう」と荷台に乗った。
「女かあ〜」
「はあ、まあ、はい」
「そうかあ、ちょっと乗せてけや」
「は、はい」
と先輩を乗せて坂道を登った。
先輩の背が低くてよかったと思った。

このままどこまで乗せてくんだろうと不安でいっぱいだったけど、
不思議と怖くはなかった。
けど、早く彼女の家にいきたかった。

坂道を登ったところで先輩は
「ありがとなあ〜」
と宙を見つめたまんま、うちわを扇ぎながら去っていった。
ホッとした。

俺は彼女の家に着いても、
先輩を乗せたことは話す気になれなかった。

宙を見つめて、ぼんやりとうちわを扇ぐ姿は寂しかった。

その景色には誰かがいるけど、
誰もいなかった。
誰もいなくなっていた。

その後の先輩のことは知らない、
噂だけが流れて、
どれも楽しくなかった。

なぜだかたまに、あの数分間を思い出す。

そしてバカヤロー!という想いになる。
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